ある朝、穏やかな町に突如響いた救急車のサイレン。
その後、地域に走ったのは、ひとりの高齢男性が県道で“遺体”として発見されたという、信じがたいニュースだった。
自転車ごと倒れたまま命を落としたのは、89歳の須貝三郎さん。
そして、逃げるように現場を去った加害者は——無免許のまま車を運転していた、33歳の自営業男。
その言い訳は、あまりに身勝手で、あまりに浅はかだった。
この事件は、ただの交通事故ではない。
人の命を“軽んじた”末の、逃走劇。
今、改めてその全貌を追う。
◆【発端】未明の県道に残された“壊れた自転車”と“動かぬ人影”
2025年6月10日、午前3時台。
埼玉県鴻巣市大芦の県道沿いで、パトロール中の警察官が“異変”に気づく。
街灯に照らされる薄暗い道路に、倒れたままの一人の男性。そして、そばには無残に壊れた自転車。
倒れていたのは、埼玉県久喜市在住の須貝三郎さん(89)。
すぐさま救急搬送されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
その姿は明らかに「ただの転倒」とは思えなかったという。
現場の状況、自転車の壊れ方、そして身体へのダメージから、警察はすぐに“ひき逃げの可能性”を視野に入れた。
そして、それはすぐに「確信」に変わっていく。
◆【捜査】「証拠は道路に残っていた」…防犯カメラが捉えた“逃走車両”の軌跡
事件現場周辺には、複数の防犯カメラが設置されていた。
その映像を丹念に追うことで、警察は“ある一台の車”を特定。車種、時間帯、走行ルート。すべてが符合していた。
この車を運転していたのが、三郷市上口に住む33歳の男、矢島良市(やじま・りょういち)。
無職ではなく「自営業」とされているが、詳細な業種は不明。
しかし、もっと驚くべき事実が浮かび上がる。——彼は“無免許”だったのだ。
数年前、何らかの理由で運転免許を取り消されていたにも関わらず、その日も平然と車を走らせていたという。
命を預かるハンドルを、何の資格もない人間が握っていた。
この事実に、誰が怒りを覚えずにいられるだろうか。
◆【逮捕】「警察を呼んだら逮捕されると思った」——あまりに身勝手な“言い訳”
矢島容疑者は、ひき逃げと無免許過失運転致死の疑いで逮捕された。
彼が供述した内容に、取材記者たちは一様に言葉を失ったという。
「無免許だったので、警察を呼んだら逮捕されると思って……怖くて、そのまま逃げました。」
まるで「自分を守るために逃げた」と言わんばかり。
被害者を助けるという発想は、微塵もなかったのだろうか。
車で人をはねた。
その事実を自覚しながら、救急車を呼ばず、立ち去る——その冷たさ、非人道性は、多くの人の心に深い怒りを刻んだ。
そして、何より重いのは、「助けていれば助かった可能性があったかもしれない」ということだ。
◆【容疑者プロフィール】矢島良市容疑者とは何者か?
現在わかっている範囲で、矢島容疑者の人物像を整理してみよう。
項目 | 内容 |
---|---|
氏名 | 矢島 良市(やじま りょういち) |
年齢 | 33歳 |
職業 | 自営業(詳細不明) |
居住地 | 埼玉県三郷市上口 |
免許状況 | 数年前に取り消され、以降無免許状態が続いていた |
犯行動機 | 「逮捕されるのが怖くて逃げた」と供述 |
家族構成 | 公表されておらず不明 |
SNS | 本人のアカウントは特定されておらず、ネット上でも情報は確認されていない |
地元では“目立つ存在ではなかった”との証言もあり、普段から目を付けられるような人物ではなかった模様。
それだけに、この突然の逮捕劇は周囲にも衝撃を与えている。
◆【地域の声】「あの場所で…まさか」「あんなに優しいおじいちゃんが」
事件が起きた鴻巣市大芦は、のどかな住宅地と田畑が広がる地域。
県道は交通量こそあるものの、普段は歩行者や自転車の通行も多い生活道路だ。
地元の住民からは、こんな声が上がっている。
「あんな静かな場所でこんな事件が起こるなんて信じられない」
「須貝さんは本当に穏やかな方で、挨拶もきちんとしてくださる“町のおじいちゃん”という感じだった」
「逃げた人間が無免許だったって聞いて、言葉を失った」
日常の風景の中で命が奪われ、犯人が“無責任な理由”で逃げていたという現実は、地域に深い悲しみと怒りを残した。
◆【問題提起】無免許運転の“再犯率”と、制度の見直し
今回の事件が浮き彫りにしたのは、「無免許運転」のリスクとその“再犯率の高さ”だ。
免許を失った人間が、簡単にハンドルを握れてしまう社会。
それを防ぐ制度や監視は、十分と言えるのだろうか?
また、無免許による死亡事故の量刑が「軽すぎる」との声も多い。
特に“逃げた”場合、被害者の命が救えた可能性を踏まえ、厳罰化を求める世論は高まりつつある。
◆【結びに】命は、簡単に奪ってはいけない——その当たり前の事実を、もう一度心に刻もう
矢島容疑者の言葉にあった「逮捕されるのが怖くて」——その言葉の裏に透けて見えるのは、
“命を軽く見た人間の無責任さ”に他ならない。
自分が逃げれば、助けも来ない。
でもそれでも「自分を守ること」を優先した、その選択の先にあったのは、一人の人生の終わりだった。
須貝さんには、きっと日常があり、家族がいた。友人も、近所の人たちもいた。
そのすべてが、たった一人の男の“判断”で、永遠に奪われたのだ。
私たちは今、交通社会の一員として「無免許運転」の重さを、もう一度深く考えるべき時に来ている。
そして、命の重さを「当たり前」に感じられる社会でなければならない。
悲劇は、もう二度と繰り返してはならない。
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