「1人5000円で、2ヶ月間、毎日仕出し弁当をお届けします。」
SNSでの宣伝用のような雰囲気、丁寧な受け答え、写真付きのメニュー表──
一見どこにでもいそうな営業マンが、次々と中小企業を訪れては“モニター価格”と称し、現金を受け取っていく。
だが、彼の姿を見たのは、その日が最後。
弁当は1つも届かず、連絡は途絶え、返金もなし。
気づいたときには、すでに被害者の列に並ばされていたのだった──。
犯人は、無職の中年夫婦。
関東一円で同様の手口を繰り返し、少なくとも20社以上から現金を騙し取ったとみられています。
そして、この事件は単なる詐欺事件では終わらない。
明らかになるのは、金に追われ、社会から転げ落ちていった人間の“落ちてゆく過程”そのものでした。
🔎 詐欺の手口──「お弁当2ヶ月で5000円!」に人々が騙された理由
まずは詐欺の基本的な構造を解説しておきましょう。
被害にあったのは、主に神奈川・千葉・東京などの中小企業や店舗。
高本伸浩容疑者(57)は、「仕出し弁当のモニター募集です」と言って訪問し、
- 2ヶ月分で5000円
- 毎日お弁当を届ける
- モニター価格で格安提供、通常は1食500円のところを100円程度でOK
という“破格の提案”をして現金を手渡しさせていたのです。
その手法はあまりに巧妙でした。
注文書や領収書の控えをしっかり渡す、ファイルに写真を入れて具体的なイメージを見せる、動画撮影中のような仕草で「SNS用なんですよ」と軽い雰囲気を出す…
すべてが「信頼させるため」に練り込まれた演出でした。
だが、結果はもちろん──弁当は一度も届かない。
誰もが「まさか、こんな金額で騙されるなんて…」とショックを隠せません。
💬 現場の声──「会社はない」「ばっくれるってことないよね?」…消えた言葉の重み
小田原市の中古車販売店「オート・エース」では、犯人とみられる男との会話が非常に印象的でした。
渋谷陽店長:「これ、ばっくれられるってことないよね?」
高本容疑者とみられる男:「ないです。大丈夫です。」
店長:「会社ってどこ?」
男:「いや、会社じゃなくて…僕はアルバイトなんで。」
もはや会社名すら出てこない、実態のない営業。
不安げな店長の問いかけに対し、言葉を濁すだけの男──
その瞬間、もし少しでも違和感に従っていれば、被害を防げたのかもしれません。
最終的に、店側は3人分として1万5000円を支払いましたが、当然、弁当は届かず。
被害届を提出することになりました。
👥 犯人夫婦のプロフィール──“普通の人”が詐欺師になるまで
高本 伸浩(たかもと のぶひろ)容疑者
- 年齢:57歳
- 職業:無職
- 過去:横浜市の自動車関連企業に勤務歴あり。だが、社用車を無断で売却するなど、金銭トラブルがたびたびあった模様。
- 詐欺歴:今回のような仕出し弁当詐欺を、確認されているだけでも1都3県・20件以上で繰り返していた。
高本 久美子(たかもと くみこ)容疑者
- 年齢:63歳
- 職業:無職
- 供述:「なぜ逮捕されたのか分からない」と、まるで自覚なし。事件への関与も否認している。
この夫婦、実は**“借金漬け”の生活を送っていた**ことが、親族への取材で明らかになっています。
💸 借金690万円の内訳──「2軒のマンションがある」「すぐ返す」その言葉を信じた家族の苦悩
伸浩容疑者は、親戚に対しても次のような“嘘”を重ねていたことが分かっています。
- 「マンション2軒を持っていて、6000万円で売れる」
- 「年が明ければ現金が入る」
- 「それまで少しだけ貸してほしい」
最初に借りた金額は20万円。
だが、1月には80万円、さらに数回に分けて貸し続けた結果、最終的には690万円にまで膨れ上がっていたというのです。
「親戚だから信じたんです。まさか、そんな人間だったなんて…」
“家族ですら裏切る”──
この事件は、ただの詐欺事件ではなく、人間関係の崩壊の記録でもあるのです。
🏠 自宅住所・SNSは?
高本夫妻は現在、「住所不詳」として報道されており、正確な居住地は不明。
また、SNSアカウントについても、現在のところ本人特定できるものは見つかっていません。
ただし、「動画撮影中だった」「SNS用に撮っている」と説明していた様子から、SNS利用を装っていた可能性は高いとみられます。
実際には、その言葉もまた“信頼させる演出”のひとつだったのでしょう。
🧩 事件の核心──なぜ“たった数千円”を騙し取る小さな詐欺を繰り返したのか?
今回の詐欺で得ていたのは、1件あたり数千円〜1万5000円。
大きな金額とは到底言えません。
ですが、それを20件以上繰り返せば、数十万円に。
「大金を騙すより、小さな金額で“疑われにくい詐欺”を重ねる」
まさに、“塵も積もれば詐欺となる”という卑劣な犯行です。
高額でなくとも、被害者にとっては大切なお金。
「信用したからこそ払ったのに…」という心の傷は、簡単に癒えるものではありません。
🎤 被害者の声──「反省してほしい」「二度とやってほしくない」
「捕まって良かったという気持ちと、正直…悔しいですね。」
「あんな丁寧な受け答え、誰でも信じるよ…。」
各地で被害に遭った企業からは、怒りや悔しさだけでなく、**“裏切られた虚しさ”**がにじみ出ています。
🧾 今後の行方は?
現在、夫婦はともに容疑を否認。
今後、裁判を通じてどこまで真相が解明されるのかが焦点となります。
- 単なる生活苦だったのか?
- 実は常習的な詐欺師だったのか?
- 久美子容疑者の関与はどこまであったのか?
これらの“人間ドラマの続き”は、まだ明かされていません。
🔚 最後に──「誰でも詐欺に加担する可能性がある時代」に私たちは生きている
この事件が教えてくれるのは、詐欺は派手な手口ではなくても、身近に潜んでいるということ。
そして、金に困った人間がどう“嘘をつく側”へと転じていくのか──
それは、どこか誰にでも起こり得る怖さを含んでいます。
「ちょっとお得」「なんか感じがいい」──
その“ちょっとした油断”が、被害の入口になる時代。
私たちもまた、気を引き締めなければならないのかもしれません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この事件に何を感じたか、あなたのコメントもぜひ聞かせてください。
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