2025年5月11日、プロレス界に衝撃が走った。
過激なデスマッチと空中殺法で一時代を築いたレジェンド、“インディーの帝王”サブゥー(本名:テリー・ブランク)が60歳という若さでこの世を去ったのだ。
各団体からの訃報発表があったものの、肝心の死因は公表されていない。
ファンはもちろん、同業のレスラーたちからも「早すぎる死」に驚きと悲しみの声が相次いでいる。
では、なぜサブゥーは命を落としたのか。
現時点でわかっている事実や過去の証言、そして彼のキャリアに潜む“危険な影”をもとに、その死因について考察していこう。
■ “壊れた身体”を引きずって──デスマッチの代償
サブゥーの試合スタイルを一言で表すなら、「命を削るパフォーマンス」だ。
テーブル、椅子、有刺鉄線、ガラス、そして火炎──。
常識では考えられない凶器を使った試合で、彼は何度も骨を折り、筋を断裂し、血を流してきた。
FMWやECWといった団体では、その過激さが最大の魅力だった。だが当然、そのツケは身体に残る。
特に晩年、彼は股関節の置換手術を受け、慢性的な脊柱管狭窄症に悩まされていた。背中の痛みでまっすぐ立てず、2023年にはSNSで「もはや日常生活も厳しい」と吐露していたほどだ。
さらに、体重はこの数年で約18キロも減少し、食欲もほとんどなかったという。
心身ともに、限界はとっくに超えていたのかもしれない。
■ 感染症と薬物トラブル──命を脅かした“過去の影”
サブゥーの健康問題は、単なる身体の酷使だけではなかった。
2004年、プエルトリコ遠征中に購入したステロイドに混入していた不明な菌が体内で感染を引き起こし、彼は一時命の危機に瀕している。
このときの症状は異常で、体内で周期的に卵が孵化するような“謎の生命活動”が起こっていたとされ、完全回復までに1年以上を要した。
当時の医師は「生還は奇跡に近い」と語ったほど深刻だったという。
また、2012年には薬物とアルコールの過剰摂取でホテルの一室で意識不明に。
当初はアレルギー反応と報じられたが、後に薬物関連の事故だったと複数メディアが追跡している。
“命を削る試合”の外でも、彼の人生は常にギリギリの綱渡りだった。
■ 愛する人の死──心に残された空洞
2021年、長年のパートナーであった女子プロレスラーのメリッサ・コーツが、COVID-19関連の合併症で急逝。彼女は“スーパー・ジーニー”としてサブゥーのマネージャーを務め、公私にわたり深い絆で結ばれていた。
彼女を失った後のサブゥーは、明らかに落ち込んでいた。
「彼女がいない人生に、もう意味はない」
そう語ったインタビュー記事もある。
心身の限界に加えて、精神的な喪失がサブゥーの生きる力を奪っていった可能性も否定できない。
■ そして、ラストマッチ──引退からわずか3週間後の死
そんなサブゥーが、つい最近引退試合を行っていたというのは皮肉でしかない。
2025年4月18日、ジョーイ・ジャネラとの試合で現役生活に終止符を打った。
その姿は「信じられないほど激しい」と賞賛され、多くのファンに感動を与えた。
だがそのたった3週間後、彼はこの世を去った。
もしかすると、自身の限界を悟っていたのかもしれない。
「最後にもう一度、ファンの前で輝きたい」
そう願った彼の魂が、力を振り絞った一夜だったのだろう。
■ 死因は“複合的な要因”か──未発表の真相に迫る
ここまで見てきた通り、サブゥーの死因は単一の病気や事故ではなく、
身体的損傷・過去の感染症・薬物履歴・精神的ショックなどが複雑に絡み合っていたと考えられる。
プロレスラーとして、極限を生きた代償はあまりにも大きかった。
それでも彼は最後まで、リングに上がり、叫び、暴れ、そして飛んだ。
彼の命が灯した炎は消えても、その熱はファンの心にいつまでも残り続けるだろう。
■ 最後に──“インディーの帝王”に最大限の敬意を
プロレスの常識を変えた男、サブゥー。
彼がいなければ、テーブルを使うプロレスは生まれていなかった。
ハードコアスタイルが今日のように市民権を得ることもなかった。
時代に翻弄されながらも、己の信じるスタイルを貫いたその姿は、まさに孤高。
改めてその死に哀悼の意を捧げたい。
Rest in pain, Sabu──あなたの試合は、永遠に忘れない。
コメント