2025年6月10日。
都内である男が静かに逮捕された。
その名は難波謙二(なんば・けんじ)、63歳。日大重量挙部の元監督であり、大学教授。スポーツ界では指導者としての名も高く、全国学生ウェイトリフティング連盟の副会長まで務めた人物だ。
だが、その“肩書”の裏には、誰もが想像できなかった冷酷な顔が隠されていた。
「奨学金は、2年目からじゃないと使えないから。」
とある春、新入生の保護者に向けてそう告げた難波容疑者。
その言葉を、誰が疑うことができるだろう。
名門・日大の監督という立場にあった彼の言葉に、保護者たちは当然のように約200万円を振り込んだ──信じていたのだから。
でも、それは全部ウソだった。
💰20年超えの“常習詐欺”──大学の名を盾に、奨学生から金を奪う日々
今回の逮捕容疑となったのは、2022年に奨学金制度の対象となった新入生4人から、入学金や授業料名目で約205万円を詐取したというもの。
だが、氷山の一角にすぎない。
警視庁と大学の内部調査によると、難波容疑者は少なくとも2005年ごろから、同様の手口で“徴収”を繰り返していた。つまり、20年以上にわたって保護者から金を騙し取ってきたのだ。
奨学金の対象となった学生には、入学金や授業料の支払いは不要。それを知っていながら、難波容疑者は意図的に「納付が必要だ」と虚偽の請求書を送り、重量挙部名義の口座に振り込ませていた。
その金は、学生のために使われるどころか、難波容疑者の“私的資金”として消えていた。
🚘「自家用車のコーティングに使った」──信じがたい金の使い道
詐取した金は、部のコーチを使って現金で引き出させ、すべて難波容疑者に手渡されていた。
その金の一部は、なんと自家用車のコーティング代に消えていたという。
まるでドラマだ。いや、ドラマよりタチが悪い。
人の善意、期待、信頼。
そのすべてを踏みにじりながら、コーティングされた愛車に乗り込む男の姿を想像してほしい。
これが現実なのだ。
🧑🎓 スポーツ推薦の光と影──制度のスキを突いた、悪意ある「手続き」
そもそも、この奨学金制度はアスリートの未来を支えるための支援策。
日大では、各運動部が前年度9月に候補者を推薦し、面接や論文などの選考を経て、対象者が決まる。合格者には大学から通知が届き、手続きの流れも案内される。
だがこの仕組みには、ひとつ大きな盲点があった。
「部活の監督」が学生に情報を伝える運用だったこと。
ここに、難波容疑者は目をつけた。
- 奨学生に選ばれたことを学生本人にも隠す
- 「まだ奨学金は適用されていない」と虚偽の説明
- 請求書を偽造し、部の口座へ入金させる
完全に“ワンマン体制”で回されていた奨学金対応の裏で、数百万円単位の金が、毎年のように消えていった。
📉「信じていたのに…」被害者の声は語るに尽くせない
被害に遭った保護者の1人は、こう語る。
「難波先生は子どもの夢を支えてくれる人だと思っていました。
本当にショックで…、今でも信じられません。」
言葉にできない怒りと、やるせなさ。
「支援制度」を信じた家族と学生たちの思いは、紙切れ一枚の偽請求書で踏みにじられたのだ。
📊 総被害額は1億円超え? 他部にも広がる“不正徴収の闇”
さらに調査は進み、重量挙部だけでなく陸上競技部、スケート部にも不正徴収の実態があることが発覚。
- 陸上&スケート部での被害者:計54人
- 被害総額:約6816万円
ただし、こちらは幹部による私的流用は確認されておらず、学生間の「学費肩代わり」のような実態があるとされている。
とはいえ、大学側の管理体制に対する信頼は、すでに地に落ちたといっても過言ではない。
👤 難波謙二とは何者だったのか?──“名物監督”の二面性
難波謙二容疑者のプロフィールは以下の通り:
- 年齢:63歳
- 在住地:東京都狛江市
- 学歴:日本大学経済学部 卒業(1984年)
- 経歴:中学校教員、国学院大講師、日本大学助教授~教授、重量挙部監督
- 肩書:全国学生ウェイトリフティング連盟副会長(2023年就任)
表向きは、アスリート育成に心血を注ぐ“教育者”。
裏では、学生や保護者から金を吸い取る“詐欺師”。
そのギャップの大きさは、学生たちにとって裏切りでしかない。
🕵️♂️ 家族やSNS、私生活は一切不明…「ミステリアスな独裁者」
気になる私生活についてだが、家族構成やSNSなど、プライベート情報は一切確認されていない。
FacebookやX(旧Twitter)にもそれらしいアカウントは見当たらず、ネット上にも“評判”や“人物像”の痕跡は極めて少ない。
まさに“影の独裁者”。
情報を巧みに遮断し、組織の中で権力を握り続けていたのかもしれない。
🧨「知らなかった」で済まされない大学の責任
今回の事件で浮かび上がったのは、制度の甘さと監督への過度な依存。
スポーツの世界では、「結果を出す監督」は絶対的な存在になりがちだ。だがそれが、チェック機能の欠如という致命的な盲点を生む。
大学はすでに難波容疑者を懲戒解雇とし、関係コーチも処分済み。しかし、それで“幕引き”にしていい問題ではない。
📢 最後に:未来ある若者の夢を壊すのは「大人の責任感の欠如」だ
誰もが、夢を持って大学に進学し、部活に打ち込み、汗を流す。
そんな若者たちの「希望」に、悪意が忍び寄っていた。
制度を整え、信頼できる人に運用を任せること。
それがなければ、今回のような悲劇は、また繰り返される。
大学スポーツの未来を守るために、今こそ大人が変わる時だ。
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