「まさか、うちの父が300万円も……」
2023年秋。東京都内に住む90代男性のもとにかかってきた一本の電話。それは、「オレオレ」とも「助けて」とも言わなかった。
しかし、劇場型詐欺の幕はすでにその瞬間から上がっていたのです――。
■ 衝撃の逮捕!詐欺の中枢にいたのは“暴力団幹部”
2025年5月。警視庁は、高齢者を狙った特殊詐欺事件で、暴力団山口組系の幹部、**小根沢拓也容疑者(41)**を逮捕。報道各社がこのニュースを大きく報じましたが、ただの詐欺事件とはわけが違いました。
なぜなら、彼は**“現場”ではなく、“司令塔”**。
金を騙し取る“受け子グループ”を組織し、支配し、裏から詐欺の現場を動かしていたというのです。
これは、「暴力団は資金源に困っている」「詐欺ビジネスにシフトしている」と噂されてきたその“証拠”とも言える事件。警察も相当の衝撃を受けたといいます。
■ 黒幕・小根沢拓也、その素顔は?
一体、小根沢拓也とは何者なのでしょうか?
- 年齢:41歳
- 出身地:不明(現在は長野県諏訪市在住)
- 所属:6代目山口組系の幹部
- 役割:詐欺グループの統括役(司令塔)
- 逮捕容疑:詐欺(高齢者からの現金詐取)
地元では静かな暮らしをしていたとも言われますが、裏の顔は**「巧妙に詐欺を操るブレーン」**。警察関係者は、「暴力団幹部自らが、実働部隊の構築に関わっていたのは異例」と語ります。
SNSやネット上に彼の活動の痕跡はほとんど残っておらず、極めてデジタルに慎重なタイプであることも判明しています。
■ 若者3人も共犯として逮捕「普通の人生が、なぜここまで…」
小根沢容疑者の指示のもと、現場で“受け子”や“運び役”として動いていたのが、以下の3人の若者たち。いずれも長野県松本市出身で、表面上はごく普通の生活を送っていたように見えます。
◉ 宮下 陸(みやした・りく)24歳
- 職業:不詳
- 状況:ネットカフェや知人宅を転々としていたとされ、職を持たない状態で金銭的にも困窮していた可能性
◉ 古川 智哉(ふるかわ・ともや)25歳
- 職業:会社員
- 状況:外見やSNSでは「真面目で堅実そう」と見られていたが、裏で詐欺に関与。上司や同僚も「信じられない」と語っている
◉ 照屋 玲奈(てるや・れいな)25歳
- 職業:会社員
- 状況:女性メンバーとして関与。高齢者とのやり取りの“安心感”を演出するために使われていた可能性もある
どこにでもいそうな20代の若者たちが、どうしてこのような重犯罪に手を染めたのか。
「お金に困っていた」「誰かに誘われて断れなかった」「ちょっとだけのつもりだった」――そんな言葉が、裁判で飛び交うかもしれません。
■ 手口は“感情操作型”の巧妙な詐欺
このグループの詐欺の手口は、ただの“オレオレ詐欺”ではありません。
彼らは徹底的に高齢者の心理を研究し、感情に訴えかける台本を作成していました。
都内の90代男性に仕掛けられた言葉は、こうです。
- 「声がかすれてるのは、喉に腫瘍があるからなんだ…」
- 「病院に行ったときにポーチを忘れちゃって…中に会社のカードがあるの」
- 「どうしても今日中に現金が必要なんだ」
自分の家族の声とは少し違う…でも病気なら仕方ない。
混乱と不安の中で、彼は300万円を差し出してしまいました。
これは、単なる詐欺ではなく、心のスキを狙った“感情詐欺”。
人間の不安と家族愛を逆手に取った、残酷な犯行でした。
■ 被害は5人、総額1000万円超えの可能性も
警視庁の調べでは、2023年10月だけでも、このグループが少なくとも5人の高齢者から総額1000万円近くをだまし取った疑いがあるとされています。
すべての被害者に共通しているのは:
- 高齢であること
- 一人暮らし、もしくは家族との関係が薄い
- 電話を鵜呑みにしやすい心理状態
このような“狙いやすい”ターゲットに対し、彼らは手当たり次第に攻撃を仕掛けていたのです。
■ なぜ暴力団が詐欺に? 背後にある“資金難”の実情
かつての暴力団は、みかじめ料やシノギ(非合法ビジネス)で収入を得ていました。しかし、暴対法・暴排条例の強化により、合法・非合法問わず収益が激減。
その代わりに注目されたのが「振り込め詐欺」や「還付金詐欺」、つまり“特殊詐欺”です。
- 組員を使わずに金を得られる
- リスクを最小化できる
- 一般人を「雇用」することで、組の関与を隠せる
つまり、**詐欺は暴力団にとって最も“効率的なビジネス”**になっていたのです。
■ 私たちが今できること——「詐欺は他人事ではない」
「自分には関係ない」「詐欺なんて引っかかるわけがない」——そう思っていませんか?
今回の被害者も、警察の事情聴取にこう語ったそうです。
「テレビで詐欺の話はよく見る。でも、まさか自分が…」
この“まさか”が、いつあなたやあなたの大切な人に訪れるかわかりません。
今すぐできる3つの対策:
- 家族間での合言葉を決めておく(例:「昔飼ってた犬の名前は?」など)
- 家の電話に留守電設定をする(知らない番号はすぐ出ない)
- 高齢の親族には、定期的に詐欺情報を共有する
■ 最後に:これは「崩れていく日本の縮図」なのかもしれない
暴力団、若者、詐欺、高齢者、孤独。
すべてが複雑に絡まり合って発生した今回の事件は、単なる犯罪ではなく、今の日本社会が抱える“影”を象徴しています。
家族との距離感、情報格差、そしてお金に対する価値観のズレ。
今後も明らかになっていくであろう新たな事実とともに、私たちはこの問題を「遠くの出来事」として見過ごすわけにはいかないのです。
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