「信じて預けたお金が、知らない口座に流れていた──」
それは、地方金融機関を舞台にしたドラマのような話。だが、これは現実だ。
2024年秋、福島県いわき市。地元密着の金融機関「いわき信用組合」で前代未聞の不正が発覚した。
その内容は、預金者の名義を勝手に使って口座を開設し、融資金を流し込んでいたという信じがたいもの。
しかもその金額、総額17億円超──。
明らかになったのは、少なくとも10年以上続いていた闇融資の実態。誰もが「まさか」と言葉を失った。
そしてこの事件の中心にいたのが、いわき信用組合のトップ・理事長 本多洋八(ほんだ・ようはち)氏である。
本記事では、その男の素顔と経歴、知られざる内情、そして辞任までの一部始終を、リアルな筆致でお届けする。
◆ 地元が生んだ“金融エリート”──理事長・本多洋八とは何者か?
本多洋八──名前こそ地味だが、彼のキャリアは地元一筋の“叩き上げ型”だ。
●プロフィール
- 名前:本多 洋八(ほんだ ようはち)
- 出身地:福島県いわき市
- 出身校:福島県立湯本高等学校
- 年齢:非公開(50代後半とみられる)
- 家族構成/SNS:非公開。SNSアカウントも確認されておらず、私生活は謎に包まれている。
「まじめ」「実直」「野心家ではないが努力家」──組合内ではそんな人物評が目立っていた。
◆ 融資畑で頭角を現し、ついに“いわしんの顔”に
1991年、いわき信用組合に入組。
コツコツと融資業務で経験を積み、20年以上かけて以下のポストを歴任していく。
- 融資部長
- 常勤理事
- 専務理事
- 2022年:理事長に就任
特別な後ろ盾があったわけではない。彼は「現場の声がわかる人材」として評価され、ついにトップへと上り詰めた。
◆ 黒字続きの“名経営者”として称賛された日々
就任後の本多氏は、「保守的だが堅実」というスタイルで金融機関のかじ取りを行った。
- いわき信用組合は12期連続黒字
- 経常収益:約35億円
- コア業務純益:約9億円
SDGsや地域スポーツ支援にも積極的で、「いわきFC応援口座」や地域事業者との連携企画も打ち出すなど、地域密着型の経営方針をアピールしていた。
だが、その輝きの裏で、**見て見ぬふりをしていた“闇の資金”**が存在していたのかもしれない。
◆ 発覚──偽名義・偽口座・隠された17億円の流れ
2024年秋。組合員の一部が、「自分の知らない口座が存在する」と訴えを起こしたことが発端だった。
証拠保全を求めて福島地裁が動き出し、いわき信組本店へ立ち入り。
そこで見つかったのは、組織ぐるみの不正を裏付ける驚くべき証拠の山だった。
- 偽造された口座:約90口座
- 融資総額:17億円以上
- 期間:少なくとも10年以上
- 印鑑:預金者名義の印鑑が90本以上。店舗別に袋分けして保管されていた。
- 使用目的:一部の取引先の“焦げ付き融資”を隠蔽し、帳簿上は正常に見せかけていた疑い。
この裏金は、内部では「B資金」と呼ばれていたという。
表向きには安定経営を装いながら、その実態は“金融ごっこ”のような不正処理の連鎖だった。
◆ そして記者会見へ──「責任を取り、辞任します」
2025年2月27日。
本多理事長は総代向けの説明会に姿を現し、冒頭から深く頭を下げた。
「これほどの不正が行われていたこと、深くお詫び申し上げます。私自身、責任を痛感しております」
重苦しい沈黙の中で、彼は辞任の意向を正式に表明。
辞任は2025年6月、理事会と総代会をもって実施される予定だ。
ただし、本多氏がどこまで“直接関与”していたのかは、いまだ明らかにされていない。
今回の不正は「旧経営陣の時代から続いていた」とする声もあり、彼自身が“知らなかった”可能性もある。
しかし、トップとしての説明責任、ガバナンスの欠如は、免れない。
◆ “理事長の素顔”を語れる人がいないワケ
不思議なことに──
本多氏について、地元でも「詳しく知っている」という声は非常に少ない。
- SNSアカウントなし
- 公の場への露出も少ない
- プライベートは一切非公開
「陰の実力者」「メディア嫌い」「職員からは信頼されていたが、外部との接点は少なかった」
──こうした声が、彼の“無口なリーダー像”を際立たせている。
◆ 信用組合にとって、何よりも大切なものが…
「信用組合」という名前の通り、“信用”こそが最大の商品のはずだった。
だが、その信用を内側から侵す行為が、何年も続いていた。
職員の一部が不正を見抜いても、口を閉ざさざるを得なかったという証言も出ている。
「発言したら潰される。そんな空気があった」──元職員の言葉は、あまりに重い。
◆ 信用は、取り戻せるのか?
いわき信用組合は今、金融庁の監査、第三者委員会による調査、そして社会からの厳しい視線にさらされている。
そして、本多洋八という男もまた──
「信じて預けたものの重さ」と、「預かった責任の重さ」を、誰よりも痛感しているだろう。
果たして、いわしんは再び“地域の信頼”を取り戻せるのか?
本多氏は、これからどんな形で責任と向き合っていくのか?
物語は、まだ終わっていない。
コメント