丹波篠山の深い山あいに、静かに、けれど確かに人を惹きつける陶芸家がいる。名は畠賢（はたけ けん）。彼が営む工房「たさうら」には、言葉で説明しきれない“静かな力”が満ちている。
焼き物の世界に生きるその姿は、派手さや誇張とは無縁。ただ、しっとりと手になじむ器のように、じんわりと心に残る存在感を放つ。
■ 畠賢さんって、どんな人？
一言で表すなら、「寡黙な情熱家」。
彼の器を手に取るとまず驚かされるのは、**“陶器なのに、どこかやわらかく感じる”**ということ。フォルムはあくまでシンプル。でもそこに宿るライン、質感、色合いには、極限までそぎ落とされた美意識と感性が詰まっている。
「きれいなモノが好きなんです」
それが彼の“こだわり”を問われたときに返ってきた、ただ一言。その裏には、言葉では語り尽くせないほどの工夫と試行錯誤がある。素材、形、色、焼き上がりの温度、手触りまで――彼の“好き”は、すべて作品に投影されている。
■ 学歴：京都で磨かれた“美意識の根”
畠さんの原点は、焼き物の土地として知られる兵庫県丹波篠山。中学・高校時代をそこで過ごし、土や火に親しむ空気の中で感性を育んだ。そしてその後、陶芸の本場・京都へと移り住み、8年間にわたり本格的に陶芸を学ぶ。
この「京都での時間」が、現在の畠さんの作風に大きな影響を与えているのは間違いない。
派手ではなく、控えめで、でも美しく品がある――そんな雅やかな佇まいは、まさに京都で培った美意識の賜物と言えるだろう。
■ 経歴：丹波に根を下ろし、「たさうら」を築く
修行を終えた畠さんは再び篠山に戻り、自らの工房「たさうら」を立ち上げる。工房があるのは、兵庫陶芸美術館から少し離れた山間の静かな場所。ここで彼は、自然と対話しながら、ゆっくりと作品を生み出している。
「土という素材が持つ素朴さを残しながらも、現代的な造形に仕上げたい」
そんな想いのもとでつくられる器たちは、どれも実用的でありながら、アートとしての存在感も兼ね備えている。
さらに彼は、陶芸教室も開いており、一般の人でも土に触れ、ものづくりの楽しさを体験できる空間を提供している。非日常の中で、土と向き合う時間。それは、現代において貴重な“心が整う瞬間”でもある。
■ 美意識は暮らしにも――私生活に垣間見える素顔
取材で訪れた彼の工房兼ご自宅は、まるでギャラリーのような整然とした空間。無駄なものが一切なく、配置や色合いに至るまで、一つひとつに美意識が行き届いている。
中でも印象的だったのは、自宅のダイニング。種類の異なる椅子が並ぶ中に、「hataチェア」と名付けられた宮崎椅子製作所の作品がさりげなく置かれている。フォルムと名前の響きが気に入って、数年前に購入したそうだ。
同じく、自身と“同い年”という食器棚には、まるでインテリアショップのように和洋の器が整然と並んでおり、彼の審美眼の高さを物語っている。
そんな空間で、お気に入りの器を使ってコーヒーを淹れる。畠さんにとっての**「豊かな時間」**は、きっとこのひとときなのだろう。
■ 結婚・家族については…
なお、畠さんのプライベートな情報――結婚や家族（配偶者・子ども）に関しては、公には明かされていません。
おそらく、それも彼の「作品を通じて語る」スタイルなのかもしれません。表に出すべきは言葉より作品、という職人気質が感じられます。
■ まとめ：静けさの中に宿る“本物”
畠賢さんの作品は、一見とても静かです。
けれど、その静けさの中にある奥深さ、美しさ、そして確かな技術に、じんわりと心を奪われる。
それは、派手さを求めない彼自身の生き方の反映でもあるのかもしれません。
「たさうら」の器に触れたとき、その手触りや重みの中に、土とともに生きる人の温度を、きっと感じられるはずです。
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