「マンモスの牙?なんかロマンあるなぁ」「でも象牙って禁止じゃなかったっけ…?」
──あなたが何気なくネットオークションを覗いたとき、もしそんな商品が目に入っていたとしたら、それは違法取引の入り口だったかもしれません。
いま、日本中を騒がせているのが、“マンモス牙”と偽って象牙を売っていた男による、前代未聞のビジネススキーム。
警視庁が逮捕したのは、「醍醐象牙店」元社長・醍醐信昌容疑者(58歳)。
彼が操っていたのは、年間1億円の荒稼ぎを可能にした、グレーゾーンギリギリどころか真っ黒な裏取引だったのです。
◆ 「合法素材」の仮面をかぶった牙
象牙は、すでに国際社会では**“NGワード”**。
アフリカゾウの乱獲と密猟による絶滅リスクが世界的に問題視され、1990年以降ワシントン条約で国際取引は原則禁止となっています。
一方、「マンモスの牙」はどうか?
こちらは約4000年前に絶滅した動物。今の法律では保護対象外で、合法的に取引可能なんです。
そしてここに、事件のトリックが潜んでいました。
醍醐容疑者は、ネットオークションサイトで**“マンモスの牙”という名称を使い、実際には象牙製品を出品。**
購入者には偽りの素材で商品が届き、そして彼の口座には現金が積み上がっていった──。
この行為が、「不正競争防止法違反」に問われたのです。
◆ なぜバレた?その手口と証拠
警視庁によると、醍醐容疑者は2022年から2023年にかけて、少なくとも12万円超の違法販売を確認。
しかしこれは“氷山の一角”でした。
彼の会社のネット販売実績は、驚きの約1億9000万円。
「オークションは人の目に触れやすいから売れるんだよ」
「出品取り消しを避けるため、“マンモス”と書いていた。年間1億円は稼いでいた」
──容疑者自身の供述には、一切の後悔もなければ迷いもない。
それどころか、“いかに上手く違法スレスレで金を稼ぐか”という、ビジネスマン的合理主義すら感じさせる内容です。
◆ 実は「登録事業者」だった…背信の重さ
もっと衝撃的なのは、彼の肩書き。
なんと、醍醐信昌は**国から正式に認可を受けた“象牙取り扱い登録事業者”**だったのです。
つまり本来なら、象牙を割ったり加工したりするたびに、「管理票」という記録を作成し、取引の透明性を担保する義務がある立場。
その人間が、よりによって「偽装販売」をしていた──。これは、単なる法令違反ではなく、制度そのものへの裏切りでもありました。
◆ 「象牙」vs「マンモスの牙」…どこが違うの?
では一体、象牙とマンモス牙の違いって、何なのでしょう?
答えはシンプルかつ厄介。
- 見た目がほぼ同じ
- 加工品になれば、専門家でも判別困難
- マンモス牙は絶滅種のため、現行法では規制対象外
つまり、見た目での識別は“ほぼ不可能”。
これを逆手に取れば、**“本物の象牙を、合法なマンモスの牙に見せかけて売る”**ことが、ある種のビジネスモデルとして成立してしまうのです。
醍醐容疑者はまさにその**「抜け道」を、最も巧みに活用していた人物**の一人だったというわけです。
◆ 醍醐信昌とは何者か?その素顔と疑惑の裏側
では、この大胆不敵な犯行を仕掛けた醍醐信昌とは、いったいどんな人物なのでしょう?
▶ プロフィールまとめ
- 名前:醍醐 信昌(だいご のぶまさ)
- 年齢:58歳(2025年時点)
- 職業:元・象牙製品販売会社「醍醐象牙店」社長
- 拠点:埼玉県草加市
報道によると、長年象牙業界で商売をしていたベテランで、会社自体も数十年の歴史を持っていた可能性があります。
ただし、家族構成や詳細な自宅住所、SNSなどの個人情報は公開されていません。
捜査中であること、また家族の安全保護の観点から、情報は厳重に管理されていると考えられます。
◆ 象牙ビジネスの“裏の顔”と法の盲点
日本国内で流通が許可されている象牙は、以下の3つに限定されています:
- 1981~1989年に合法的に輸入された象牙
- 1999年と2009年、国際会議の手続きを経て特別に輸入された象牙
- これらを加工・登録して取引可能とされた製品
これらを合わせても、約2090トン。
そのうち35%=約740トンが、すでに印鑑や彫刻品、置物などに加工されているとされています。
それでも、日本では象牙ビジネスは「絶滅していない」──。
なぜなら、今回のように偽装や不正表示、グレーな素材流通が横行しているからです。
欧米諸国では、すでに象牙の国内取引そのものを全面禁止している国も少なくありません。
日本の制度は、いまだ“緩い”と見る向きもあります。
◆ まとめ:1本の牙が、欲と罪を映し出す
「牙」とは、時に権力の象徴であり、時に欲望の具現でもあります。
醍醐信昌容疑者の事件は、ただの「偽装販売」にとどまりません。
それは、法の網をすり抜けて利益を追求する、グレー経済の縮図だったのです。
買う側も、売る側も、今一度立ち止まって考えるべきかもしれません。
「それ、本当に“マンモスの牙”ですか?」
✍ エンタメ編集部コメント
もし次に「レアな素材の置物」「本物の牙の印鑑」なんてアイテムを見かけたら、ちょっと立ち止まってみましょう。
その“レア感”の裏に、法とモラルを無視したビジネスが潜んでいるかもしれません…。
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