「ご飯奢ってくれませんか?」
その一言が、女性芸人の怒りを爆発させ、ネット上に波紋を広げる事件へと発展した。
5月13日、お笑いコンビ「てるてる娘」のさえぴーがX(旧Twitter)に投稿した一言が、大きな反響を呼んでいる。
「二度と話しかけるなよ」
この強い言葉の裏には、ライブ終わりの新宿の路上で起きた、ある“迷惑行為”への憤りがあった。
正体不明の“奢ってくれおじさん”、動画は何を映していたのか
発端となったのは、「俺に奢れ!」という約2万人のフォロワーを持つXアカウントが投稿した一本の動画。動画のコンセプトは、“街で見ず知らずの人にご飯を奢ってもらう”というシンプルかつ挑戦的なもの。投稿主は30歳・無職と自称し、顔にはモザイクをかけ、自身の素性は伏せたまま活動している。
問題の動画では、さえぴーと相方がライブ後の新宿を歩いていたところ、突如カメラを向けられ「ご飯奢ってくれませんか?」と声をかけられる。もちろん、2人は困惑しながら何度も断る。しかし動画主はその場を離れず、ついには駅の改札まで追いかけてきたという。
一連のやりとりに、画面越しに見ていた視聴者からも不快感の声が続出。さえぴーがXに怒りの投稿をすると、瞬く間に共感のリプライが寄せられた。
「逃げんなよ」──視聴者も凍りついた恐怖の一言
動画の終盤、動画主が放った「逃げんなよ」という言葉が、多くの視聴者に“恐怖”として突き刺さった。
「普通に怖い。警察呼ばれてもおかしくないレベル」
「街中で突然知らない男に話しかけられるの、マジで怖い」
「女2人だったから対応できたかもだけど、1人だったら泣くと思う」
SNS上には、さえぴーの心情に寄り添う声が多数寄せられた。特に女性ユーザーからは、「ナンパや迷惑行為とは違う、もっと根本的な恐怖」との声も多く、動画の“軽さ”に比して、受け手の感じた不安はあまりにも重かった。
「俺に奢れ!」とは何者?
さて、今回問題となったXアカウント「俺に奢れ!」の正体とは一体何者なのか。プロフィールは非常にシンプルで、公開されている情報は以下の通り。
- 名前:不明(顔はモザイク処理)
- 年齢:30歳(自称)
- 職業:無職
- 活動内容:街中で見知らぬ人に食事を奢らせるという挑戦的なコンテンツを投稿
- フォロワー数:約2万人(Xアカウント)
彼はYouTubeにも同名のチャンネルを運営しており、動画の内容はほぼ同じ。“奢らせ企画”を中心に、街で知らない人に声をかけ、食事を奢らせるというスタイルで注目を集めている。しかし、その手法が過剰であり、視聴者からは「迷惑行為」として反感を買っている。
さらに、XやYouTubeでの活動においては、自身の顔をモザイク処理で隠しているため、素性が不明。顔を隠すことで、視聴者の反感を避けている可能性もあるが、その行動自体がさらに不信感を募らせている。
“やらせ”かリアルか? 境界が曖昧な動画文化の危うさ
「俺に奢れ!」アカウントは、YouTubeにも同名のチャンネルを運営しており、今回の動画も昨年12月に投稿されたものだった。しかし、Xでの再拡散によって今になって問題視された形だ。
さらに驚くべきことに、2月の投稿にも「てるてる娘」が出演していたことが判明。つまり、過去に“共演”経験がある可能性もあるのだ。ただ、今回の動画は明らかに突撃的で、さえぴー本人も「奢ってないし怒ってないです」としながらも、今回は見過ごせなかったようだ。
こうした背景から、「実は仕込みでは?」という声も一部で上がっている。しかし、芸能ジャーナリストは警鐘を鳴らす。
「やらせであれば、明示するのが当然です。視聴者に“リアル”と思わせる演出をして、実際に恐怖を感じる人がいるなら、それは倫理的に問題がある。」
「迷惑系」コンテンツの末路──過去には逮捕者も
思い出されるのは、かつて“迷惑系YouTuber”として知られた「へずまりゅう」氏の存在。彼は無許可での撮影や突撃取材などを繰り返し、最終的には威力業務妨害などの罪で逮捕され、執行猶予付きの懲役刑を受けた。
「俺に奢れ!」の投稿主がどこまで演出を意図しているかは不明だが、突然の撮影・声かけ・追跡といった行為は、現実世界で通用するものではない。
「女性に突然“奢れ”と迫り、カメラを回されたら、恐怖を感じるのは当然です。笑えないし、むしろ危険です」
ネット発信が自由になった一方で、その“自由”が他者の安心や安全を侵してしまうとき、もはやそれは「コンテンツ」ではなく「加害」になり得る。
まとめ:バズの裏に潜む“暴力性”を見逃すな
SNSの時代、誰もが発信者になれる。でも、だからこそ必要なのは、他者への配慮と責任感だ。
エンタメを装った動画が、誰かの恐怖や怒りのきっかけになってしまう時代。笑いの裏に潜む“暴力性”に気づけるかどうかが、今、発信者に問われている。
「二度と話しかけるなよ」
この一言に込められた本音は、きっと多くの人に届いたはずだ。
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