5月17日、夜のフジテレビに熱気が満ちた。
漫才界の実力者たちが集う賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~』決勝戦。頂上決戦に駒を進めたのは、16年以上キャリアを積んできた精鋭たちの中でも、特に技巧派と呼ばれる囲碁将棋と、今年初ファイナリストにして一気に波に乗ったツートライブだった。
結果は——ツートライブの勝利。
会場に響いた大きな拍手と、たかのりの目に光る涙。
この瞬間、ツートライブは見事、第3代王者に輝いた。
だが、なぜ囲碁将棋ではなく、ツートライブが勝ったのか?
そこには、笑いの質や戦略、そして“ライブ感”という要素が複雑に絡み合っていた。
本記事では、決勝戦の裏側に隠された勝因を、エンタメ目線で徹底的に掘り下げていく。
1. “間”と“リズム”で心をつかんだ、ツートライブの構成力
漫才は、ただ面白いネタを披露するだけではない。
「どこで溜めて、どこで爆発させるか」——その間の取り方ひとつで、笑いの質は大きく変わる。
ツートライブの決勝ネタは、まさにその**「緩急の妙」が際立っていた。
序盤の軽妙なやりとりで観客をあたため、中盤から終盤にかけて一気にエンジンをかける構成**。爆発的なボケとツッコミの応酬に、会場が沸いた。
得点を見ても、最もウケた層を示す「3点評価」が87点。
これは決勝において囲碁将棋よりも6点上回る数字で、単純な“面白さ”以上に、ツートライブの漫才が観客の感情をどれだけ揺さぶったかを物語っている。
2. 「技巧派」vs「爆発力」——対照的なスタイルのぶつかり合い
囲碁将棋の漫才は、構成の緻密さとことば選びのセンスが光る。まるで演劇のような完成度で、知的で静かな笑いをじわじわと広げていくタイプだ。
一方のツートライブは、関西の王道を貫いた勢い重視のスタイル。
特に今回のネタでは、周平魂の熱量のあるツッコミと、たかのりの“ズレた視点”がうまくかみ合い、何度も笑いのピークを作り出していた。
この「盛り上がりの波の多さ」が、観客の心を強く掴んだ。
いわば今回は、「完成度」よりも「ライブでの爆発力」が評価された瞬間だったのだ。
3. 観客の“感情”を動かす力——ツートライブに宿った物語性
笑いは感情の爆発だ。
そしてトーナメント後半、特に決勝では、**単なる面白さ以上の“人間の熱”**が、勝負を分けることがある。
決勝の舞台でネタを終えたあと、たかのりは涙を流した。
決して“泣き芸”ではない、心からの感情。そのとき彼は、相方・周平魂に向かってこう叫んだ。
「うれしいな!」
この一言に、17年間売れなかったコンビの苦労と信頼関係、そして夢を掴んだ喜びが詰まっていた。
ネタの出来だけでなく、ツートライブの人生そのものが観客の胸を打った。そんな瞬間だった。
囲碁将棋のクールで緻密な芸も素晴らしかったが、感情という面でツートライブは一歩抜けていた。それは観客やオーディエンスの「心の投票」にもつながったはずだ。
4. “空気を支配する力”と“勢い”の継続性
大会を通して見ると、ツートライブは1回戦から一度も勢いを落とさず勝ち進んでいる。
モンスターエンジン、はりけ~んず、そして囲碁将棋と、すべて実力者ばかり。それでも勝ち切れたのは、ただネタが面白かったからではない。
むしろ、彼らは空気を自分たちのものにする術を持っていた。
出てきた瞬間に会場の空気を掴み、ボケで笑わせ、ツッコミで流れを加速させる。
この「支配力」と「安定感の中にある爆発」が、トーナメント形式に極めて強く作用した。
また、準決勝や決勝では1点・2点評価こそ控えめだったものの、「3点評価」(=大ウケ)では常にトップクラス。この**“高火力型”の芸風**こそ、トーナメント制で勝ち抜く最大の武器となったのだ。
■ 総括:ツートライブが示した、“賞レース”の真髄
ツートライブの勝利は、単なる技術やネタの巧さを超えたものだった。
彼らの漫才には、「タイミング」「熱」「人間味」、そして“観客と一緒に笑いを作る”というライブ感が詰まっていた。
一方で、囲碁将棋はやはり実力派としての安定感を発揮していた。決勝戦の得点差はわずか8点。紙一重の勝負だったからこそ、この戦いは価値がある。
『THE SECOND』は、単なる勝ち負けでは測れない**“今、誰が最も舞台に生きていたか”**を教えてくれる賞レースだ。
そして2025年、その舞台を最も熱く、最も人間らしく使い切ったのが、ツートライブだった。
おめでとう、ツートライブ。
17年の漫才人生は、この日のためにあったんだ。
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