運動前のコーヒーで血流量減少
Medical Tribune 2006年4月20日
[米メリーランド州ベセズダ]
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チューリヒ大学病院と同大学統合ヒト生理学センター(ともにスイス・チューリヒ)のPhilipp A.Kaufmann,Medhdi Namdarの両博士らは、健常ボランティアを対象にした研究を行い、コーヒー2杯分のカフェインは運動中に血流を心筋に送り込む能力を低下させ、その影響は被験者を高地に似せた部屋に入室させたときに増強したとJournal
of the American College of Cardiology に発表した。
「被験者は健常な若年層」
Namdar博士らは、対象としたコーヒーを常用する健常若年者(18例)には検査開始前の36時間はコーヒーを飲ませなかった。 研究の第一部では、10例について固定自転車に乗る前と直後に心臓への血流を示すPETスキャンを行った。第二部では、高度4500mに相当する低酸素状態の部屋に8例を入れ、同様の心筋
血流計測を行った。この高地環境は、冠動脈疾患により心筋から十分な酸素が奪われた状態を模した ものである。両グループとも、被験者がコーヒー2杯分のカフェイン200mgを含む錠剤を飲んだ後、50分間試験を繰り返した。このカフェイン服用は、被験者が休んでいる間は心筋内の血流に影響を与えなかった。しかし、
運動の直後に計測した血流値は、カフェイン錠を服用後も有意に低かった。この影響は、高地を模した被験者群で特に顕著であった。血流は通常、運動に応じて増加するが、この試験結果はカフェインが原因で必要な心筋への血流を増す能力が低下することを示している。運動中の血流と休息中の血流の比率である心筋血流予備能
(MFR)は、カフェイン服用後は通常の気圧の場合22%低く、高地を模した気圧の部屋では39%低かった。
「身体機能には逆効果」
これらの試験結果が健常ボランティアに対して臨床上問題がないにしても、冠動脈疾患患者に対しては特に運動前や高地の空気への曝露時などでの安全性に疑問を生じると言える。いずれにせよ、カフェインは刺激剤であるが、コーヒーは運動能力を必ずしも高めないことを示している。Namda博士は「カフェインが心筋血流レベルに対して有効な刺激剤でない証拠は十分にある。大脳の
レベルでは覚醒や警戒などの点で刺激剤として使用する可能性はあり、そのために主観的に身体能力が改善したと感じるかもしれない。しかし、肉体を刺激するのではなく、身体機能には逆効果である可能性があるため、運動選手にスポーツ前のカフェイン摂取は勧めない。以前考えられていたほど無害ではないが、冠動脈疾患患者や、登山中は特に注意が必要である」と述べている。Kaufmann博士は、この研究は運動能力を計測するよう考えられたものではないとしている。被験者は全例健康であったが、試験結果は心疾患患者にカフェインが与える影響について懸念をもたらした。同博士は「どのようなアドバイスも、健康なボランティアの試験結果に基づくため推論でしかないが、私自身は運動をする前にコーヒーを飲まないように推奨する」と述べている。なお、コーヒーと心疾患に関する他の研究結果は一定していない。今回の被験者は18例にすぎないが、同博士らは観察された差異はカフェインの心筋血流への影響が事実であるのを示すのに十分であるとしている。血流への影響に重要な健康上の効果があるかどうかを理解するには、長期にわたり心疾患患者について研究する必要があるとしている。
「狭心症を促進する可能性も」
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デービッド・ゲッフェン医学部(ロサンゼルス)のThomas H.Schindler 博士は、この結果が確認できれば重要な含意があるとして、次のように述べている。
「この機序は、特に冠血管腔径が50〜85%縮小した中等度の閉塞性冠動脈疾患患者に重要な意味をもたらす可能性がある。
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この程度の冠動脈疾患誘発性の冠血管狭小化ではMFRで補完され、冠血流は維持できると広く考えられてきた。カフェイン摂取などによりMFRがさらに低下すれば、ストレス性心筋虚血、さらには冠動脈の酸素需給バランスが乱れて狭心症を促進する可能性があり、急性冠症候群の発現などの原因になる。したがってNamdar博士らが明言している通り、今回の調査結果は、冠動脈疾患などMFRが既に低下している患者に対して、特に運動前と高地でのカフェイン摂取の安全性に疑問を提起している」。 |